びこめ同じところに縒《よ》りも合はなん
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 と書いて大姫君に見せた。またとうるさく女王は思いながらも、

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貫《ぬ》きもあへずもろき涙の玉の緒に長き契りをいかが結ばん
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 と返しを書いて出した。「逢はずば何を」(片糸をこなたかなたに縒りかけて合はずば何を玉の緒にせん)と薫は歎かれるのであるが、自身のことを正面から言うことはできずに、洩《も》らす溜息《ためいき》に代える程度により口へ出しえないのは、姫君のあまりに高貴な気に打たれてしまうことが多いからであった。それで兵部卿《ひょうぶきょう》の宮と中の君の縁組みのことを熱心なふうに言い出した。
「それほど深くお思いになるのでなく好奇心をお働かせになることが多くて、お申し込みになったのを、冷淡にお扱われになるために、負けぬ気を出しておいでになるだけではないかと、私は考えもしまして、いろいろにして御様子を見ていますが、どうも誠心誠意でお始めになった恋愛としか思われません。それをどうしてただ今のようなふうにばかりこちらではお扱いになるのでしょう。ものの判断がおできにならぬほ
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