打たせたり、詩の中の漢字の偏を付け比べる遊戯をおさせになったりしてごらんになるのであるが、第一女王は品よく奥深さのある容貌《ようぼう》を備え、第二の姫君はおおようで、可憐《かれん》な姿をして、そして内気に恥ずかしがるふうのあるのもとりどりの美しさであった。春のうららかな日のもとで池の水鳥が羽を並べて游泳《ゆうえい》をしながらそれぞれにさえずる声なども、常は無関心に見もし、聞きもしておいでになる心に、ふと番《つが》いの離れぬうらやましさをお感じさせる庭をながめながら、女王たちに宮は琴を教えておいでになった。小さい美しい恰好《かっこう》でそれぞれの楽器を熱心に鳴らす音もおもしろく聞かれるために、宮は涙を目にお浮かべになりながら、
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「打ち捨ててつがひ去りにし水鳥のかりのこの世に立ち後《おく》れけん
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悲しい運命を負っているものだ」
とお言いになり、その涙をおぬぐいになった。御容貌のお美しい親王である。長い精進の御生活にやせきっておいでになるが、そのためにまたいっそう艶《えん》なお姿にもお見えになった。姫君たちとおいでになる時は礼儀をおく
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