の強大さが思われた。
夕方になって源侍従の薫《かおる》がこの家へ来た。昼間|玉鬘《たまかずら》夫人の前へ現われたこの人よりもやや年長の公達《きんだち》も、それぞれの特色が備わっていて悪いところもなく皆きれいであったが、あとに来たこの人にはそれらを越えた美があって、だれの目も引きつけられるのであった。美しい物好きな若い女房たちなどは、
「やっぱり違っておいでになる」
などと言った。
「こちらのお姫様にはこの方を並べてみないでは」
こんなことを聞きにくいまでに言ってほめる。そう騒がれるのにたるほどの優雅な挙止を源侍従は見せていて、身から放つ香も清かった。貴族の姫君といわれるような人でも頭のよい人はこの人をすぐれた人と言うのはもっともなことだとくらい認めるかと思われた。尚侍は念誦堂《ねんずどう》にいたのであったが、
「こちらへ」
と言わせるので、東の階《きざはし》から上がって、妻戸の口の御簾《みす》の前へ薫はすわった。前になった庭の若木の梅が、まだ開かぬ蕾《つぼみ》を並べていて、鶯《うぐいす》の初声《はつね》もととのわぬ背景を負ったこの人は、恋愛に関した戯れでも言わせたいような美しい
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