。あなた様についての御息所のこのお悲しみ方を宮様はただ呆然《ぼうぜん》として見ておいでになりました」
あきらめられぬようにこんなことを少将は言っていて、まだ頭はかなり混乱しているふうであった。
「そうではあっても、宮様はもう常態にお復しになってしかるべきだと思う。私に対してあまりな知らず顔をお作りになるのは、思いやりのないことではありませんか。もったいないことですが、孤独におなりになった宮様にだれがお力になるとお思いになるのだろう。法皇様はいっさい塵界《じんかい》と交渉を絶っておいでになる御生活ぶりですから、御相談事などは申し上げられないでしょう。あなたがたが熱心になって宮様の私に対する御冷酷さをお改めになるようによくお話し申し上げてください。皆宿命があって、一生孤独でいようとあそばしても、そうなって行かないということもお話し申すといい。人生が望みどおりに皆なるものであれば、この悲しい死別はなされなくてもよかったわけではありませんか」
などと夕霧は多く言うのであるが、少将は返事もできずに歎息《たんそく》ばかりしていた。鹿《しか》がひどく啼《な》くのを聞いていて、「われ劣らめや」(秋
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