た。黒を重ねた上に黒の小袿《こうちぎ》を着ていた。
「御息所のお亡《かく》れになったのを悲しむことと宮様のいつまでも御冷淡であらせられるのをお恨みするのが私の心の全部になって、ほかのことは頭にありませんから、だれからも私は怪しまれてしかたがありません。もう私に忍耐の力というものがなくなりましたよ」
これを初めにして、夕霧はいろいろと恋の苦しみを訴えた。御息所の最後の手紙に書かれてあったことも言って非常に泣く。少将もまして非常に泣く。
「その時のことでございますがね、あなた様がおいでにならぬばかりか、御自身のお返事もおもらいになれないままで暗くなってまいりますのに悲観をあそばしましてとうとう意識をお失いになりましたのに物怪《もののけ》がつけこんで、そのまま蘇生《そせい》がおできにならなかったのだと私は拝見いたしました。以前の御不幸のございました時にも、もうそんなふうにおなりになるのでないかと私どもがお案じいたしましたようなことがおりおりございましたが、宮様がお悲しみになってめいっておいであそばすのをおなだめになりたいとお思いになるお心の強さから、御健康をお持ち直しになったのでございます
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