、知らぬ者がないほどにあなた様のことが世間へ知れましたのを残念がっておいでになるのでございます」
「私の愛は噂《うわさ》とか何とかいうものに左右されない絶大なものなのだがね。そんなことが理解していただけないとは苦しいものだ」
 と大将は歎息して、
「普通にお居間のほうへおいでになれば、物越しで私の心持ちをお話しするだけにとどめて、それ以上のことはまだいつまでも待っていていいのです」
 同じようなことをまた取り次がせるのであったが、
「弱いものがこんなに悲しみに疲れております際に、しいていろいろなことをおっしゃるのが非常にお恨めしく思われるのでございます。人が見てどう私が思われることでしょう。その一部は私の不幸なせいでもあるでしょうが、あなた様がお一人ぎめをあそばしたからだとこれを思います」
 とまた御抗弁になった。まだ親しもうとあそばすふうはない。そうは言っても、いつまでも真の夫婦になりえないことは、人の口から世間へも伝わるであろうから恥ずかしいと、この女房たちに対してさえきまり悪く思う大将であった。
「実際のことは宮様の御意志どおりの関係にとどめるにしても、この状態はあまりに変則だ。
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