ですね。世間にはたくさんあることですが、三条の姫君がどう思っていらっしゃるだろうかとおかわいそうですよ。今まであんなに幸福だったのですから」
「可憐《かれん》な人のようにお言いになる姫君ですね。がさつな鬼のような女ですよ」
 と言って、また、
「決してそのほうもおろそかになどはいたしませんよ。失礼ですがあなた様御自身の御境遇から御推察なすってください。穏やかにだれへも好意を持って暮らすのが最後の勝利を得る道ではございませんか。嫉妬《しっと》深いやかましく言う女に対しては、当座こそ面倒だと思ってこちらも慎むことになるでしょうが、永久にそうしていられるものではありませんから、ほかに対象を作る日になると、いっそうかれはやかましくなり、こちらは倦怠《けんたい》と反感をその女から覚えるだけになります。そうしたことで、こちらの南の女王の態度といい、あなた様の善良さといい、皆手本にすべきものだと私は信じております」
 と継母をほめると、夫人は笑って、
「物の例にお引きになればなるほど、私が愛されていない妻であることが明瞭《めいりょう》になりますよ。それにしましてもおかしいことは、院は御自身の多情なお
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