減っていても、他の者の目にはやはりきわめておみごとなものに見えるのであるが、御自身では非常に衰えてしまった、もう結婚などのできる自分ではない、いろいろな不幸にむしばまれた自分なのだからとお思い続けになって、お召しかえになった姿をまたそのまま横たえておしまいになった。
「時間が違ってしまう。夜がふけてしまうだろう」
などと言って、お供をする人たちは騒いでいた。時雨《しぐれ》があわただしく山荘を打って、全体の気分が非常に悲しくなった。
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上りにし峰の煙に立ちまじり思はぬ方になびかずもがな
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とお口ずさみになったとおりに宮は思召すのであるが、そのころは鋏刀《はさみ》などというものを皆隠して、お手ずから尼におなりになるようなことのないように女房たちが警戒申し上げていたから、そんなふうにお騒ぎをせずとも、惜しく尊重すべき自分でもないものを、しいて尼になってみずからを清くしようとも思わず、すればかえって人の反感を買うにすぎないことも知っているのであるから、と思召して宮は御本意を遂げようともあそばさないのである。女房は皆移転の用意に急いで、お櫛箱
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