また一方から言えば女という罪障の深いものに生まれて、救いのない長夜の闇《やみ》に迷うのもこうした関係から生じる煩悩《ぼんのう》が原因になり、恐ろしい報いを受けることになりますからな、長い絆《きずな》が付きまとわることですからな、絶対によろしくないことじゃ」
 律師は頭を振り立てながら、興奮して乱暴なことも言うのである。
「私には腑《ふ》に落ちないことですよ。そんな様子などは少しもお見せにならなかった方ですもの、昨日は私があまり苦しんでいたものですから、しばらく休息をしてからまた話そうとお言いになって、あちらにいらっしゃると女房たちは言っていましたが、そんなふうで夜明けまでおいでになったのでしょう。至極まじめな堅い方をそんなふうに言う人があるのはよくありません」
 と御息所はなお不審をいだくふうを僧に見せながらも、心のうちではそんなことがあったのかもしれない、宮を恋しくお思いする様子はおりおり見えたが、りっぱな人格のある人は人の批難の種になるようなことは避けて、まじめな友情だけを見せていたために、危険はないものとして自分は油断をしていたが、おそばに人も少ないのを見てお居間へはいるようなこ
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