て、宮様に、こんなふうに死が迫っているということを申し上げてください。どうした前生の因縁からこんなに道にはずれた思いが心に染《し》みついた私だろう」
 泣く泣く病床へ衛門督は膝行《いざ》り入るのであった。平生はいつまでもいつまでも小侍従を前に置いて、宮のお噂《うわさ》を一つでも多く話させたいようにする人であるのに、今日は言葉も少ないではないかと思うのも物哀れで、小侍従は出て行けない気がした。容体を伯母《おば》の乳母《めのと》も話して大泣きに泣いていた。大臣などの心痛は非常なもので、
「昨日今日少しよかったようだったのに、どうしてこんなにまた弱ったのだろう」
 と騒いでいた。
「そんなに御心配をなさることはありません。どうせもう私は死ぬのですから」
 と衛門督《えもんのかみ》は父に言って、自身もまた泣いていた。
 女三の宮はこの日の夕方ごろから御異常の兆《きざし》が見え出して悩んでおいでになるので、経験のある人たちがそれと気づき、騒ぎ出して院へ御報告をしたので、院は驚いてこちらの御殿へおいでになった。お心のうちではなんら不純なことがなくて、こうしたことにあうのであったら、珍しくてうれしい
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