っているでしょうが、どんなふうかともお尋ねくださいませんことはもっともなことですが、私としては悲しゅうございます。
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こんなことを書くのにも衛門督は手が慄《ふる》えてならぬために、書きたいことも書きさして先を急いだ。
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今はとて燃えん煙も結ぼほれ絶えぬ思ひのなほや残らん
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哀れであるとだけでも言ってください。それに満足します心を、暗い闇《やみ》の世界へはいります道の光明にもいたしましょう。
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と結んだのであった。
小侍従にもなお懲りずに督《かみ》は恋の苦痛を訴えて来た。
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直接もう一度あなたに逢《あ》って言いたいことがある。
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とも書いてあった。小侍従も童女時代から伯母《おば》の縁故で親しい交情があったから、だいそれた恋をする点では、迷惑な主人筋の変わり者であると面倒には思っていたものの、生きる望みのなくなっている様子を知っては悲しくて、泣きながら、
「このお返事だけはどうかなすってくださいまし。これが最後のことでございましょうから」
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