れらの処置を皆しておくことにしたい。この院も妻としては冷ややかに見ても、今からの宮を不人情に放ってはおくまい。自分はその態度を見きわめておく必要があると思召して、
「では私がこちらへ来たついでにあなたの授戒を実行させることにして、それを私は御仏《みほとけ》から義務の一つを果たしたことと見ていただくことにする」
と仰せられた。六条院は遺憾にお思いになった宮の御過失のこともお忘れになって、なんとなることかと心をお騒がせになって、悲しみにお堪えにならずに、几帳の中へおはいりになって、
「なぜそういうことをなさろうというのですか。もう長くも生きていない老いた良人《おっと》をお捨てになって、尼になどなる気になぜおなりになったのですか。もうしばらく気を静めて、湯をお飲みになったり、物を召し上がったりすることに努力なさい。出家をすることは尊いことでも、身体《からだ》が弱ければ仏勤めもよくできないではありませんか。ともかくも病気の回復をお計りになった上でのことになさい」
とお話しになるのであるが、宮は頭《かしら》をお振りになって、おとめになるのを恨めしくお思いになるふうであった。何もお言いにはなら
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