のお話の中で私を悪くお言いになったことが私をくやしくさせました。もう私は死んでいるのですから、私が悪くってもあなたはよくとりなして言ってくだすっていいではありませんか。そうお恨みしただけで、こんな身になっていますと大形《おおぎょう》な表示にもなったのです。奥様を深く恨んでいませんが、法の護《まも》りが強くて近づけないので反抗してみただけです。あなたのお声もほのかに承ることができましたからもういいのです。私の罪の軽くなるような方法を講じてください。修法、読経《どきょう》の声は私にとって苦しい焔《ほのお》になってまつわってくるだけです。尊い仏の慈悲の声に接したいのですが、それを聞くことのできないのは悲しゅうございます。中宮にもこのことをお話しくださいませ。後宮の生活をするうちに人を嫉妬《しっと》するような心を起こしてはならない、斎宮をお勤めになった間の罪を御仏《みほとけ》に許していただけるだけの善根を必ずなさい、あの世で苦しむことをよく考えなければならないとね」
 などと言うが、物怪に向かってお話しになることもきまり悪くお思いになって、物怪がまた出ぬように法の力で封じこめておいて、病夫人を
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