がりび》も消えかかっている社前で、まだ万歳万歳と榊《さかき》を振って祝い合っている。この祝福は必ず院の御一族の上に形となって現われるであろうとますますはなばなしく未来が想像されるのであった。非常におもしろくて千夜の時のあれと望まれた一夜がむぞうさに明けていったのを見て、若い人たちは渚《なぎさ》の帰る波のようにここを去らねばならぬことを残念がった。はるばると長い列になって置かれた車の、垂《た》れ絹の風に開く中から見える女衣装は花の錦《にしき》を松原に張ったようであったが、男の人たちの位階によって変わった色の正装をして、美しい膳部を院の御車《みくるま》へ運び続けるのが布衣《ほい》たちには非常にうらやましく見られた。明石の尼君の分も浅香の折敷《おしき》に鈍《にび》色の紙を敷いて精進物で、院の御家族並みに運ばれるのを見ては、
「すばらしい運を持った女というものだね」
 などと彼らは仲間で言い合った。おいでになった時は神前へささげられる、持ち運びの面倒な物を守る人数も多くて、途中の見物も十分におできにならなかったのであったが、帰途は自由なおもしろい旅をされた。この楽しい旅行に山へはいりきりになっ
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