うとされるのであるが、宮は手も慄《ふる》えてお書きになれない。あの濃厚な言葉の盛られてあった衛門督《えもんのかみ》の手紙の返事はこんなに渋らずに書かれたであろうとお思いになると、また反感が起こるのでもおありになったが、それでも院は言葉などを口授《くじゅ》してお書かせになった。
「お伺いになることはこんなことで今月もだめでしたね。それに新婚者の女二《にょに》の宮《みや》が派手《はで》な御賀をおささげになった時に、老人の妻であるあなたが競争的に出て行くのは遠慮すべきだと思いましたよ。十一月はあなたのお母様の忌月でしょう。十二月はあまりに押しつまってよろしくないし、あなたの身体《からだ》も見苦しくなるだろうから、久しぶりにお姿を御覧に入れるのはいかがかと思いますが、しかしそうそう延ばしてよいことでありませんからね、あまり物思いをしないようにして、朗らかな心になって、痩《や》せたお顔のなおるようにまずなさい」
などとお言いになって、さすがにかわいくは思召すのであった。
衛門督をどんな催し事にも必要な人物としてお招きになって御相談相手に今まではあそばす院でおありになったが、今度の法皇の賀に限
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