苦痛ですからね。あなただけにでも私が軽薄な者でないことを認めてほしいと思うのですよ。深く物をお考えにならないで、人のいいかげんな言葉にお動きになるあなたには、私のほんとうの愛が浅いものに見えもするでしょうし、またあなたとは年齢《とし》の差のはなはだしい良人《おっと》を軽蔑《けいべつ》したくもなるでしょうけれど、私としてそれを残念に思わないわけはありませんが、院の御在世中だけは、これを幸福な道としてお選びになったことですから、老いた良人をもあまり無視するようなことはお慎みになるがいいのですよ。昔から願っている出家の志望も、自分よりは幼稚な宗教心しか持つまいと思っていた女の人たちが先に実行するのを傍観しているのも、私自身がこの世の欲を捨てえないのではなくて、出家をあそばす際にはあなたをお託しになった院のお志に感激した心が、すぐまた続いてあなたを捨てて行くような行動を取らせなかったのですよ。以前は気がかりに思われた人も今ではもう出家の絆《ほだし》にならないだけになっているのです。女御だってどうなるか知りませんが、皇子たちがお殖《ふ》えにもなってゆくのですから、後宮の地位などは問題にさえせねば
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