ことをどう聞いておいでになるであろうと思うと晴れがましいような気もするのであった。この夫人からも新婚した姫君の衣裳《いしょう》その他の世話をした。前夫人がどう恨んでいるかというようなことは知らぬふうにして、長男、次男を中にして好意を寄せる尚侍《ないしのかみ》に前夫人は友情をすら覚えているのであるが、式部卿の宮家には大夫人という性質の曲がった人が一人いて、この人は常にだれのことも憎んで、罵言《ばげん》をやめないのである。
「親王がたというものは一人だけの奥さんを大事になさるということで、派手《はで》な生活のできない補いにもなろうというものだのに」
と陰口《かげぐち》をするのが兵部卿の宮のお耳にはいった時、不愉快なことを聞く、自分に最愛の妻があった時代にも他との恋愛の遊戯はやめなかった自分も、こうまではひどい恨み言葉は聞かないでいたとお思いになって、いっそう亡《な》き夫人を恋しく思召《おぼしめ》すことばかりがつのって、自邸で寂しく物思いをしておいでになる日が多かった。そうはいうものの二年もその状態で続いて来た今では、ただそれだけの淡い関係の夫婦として済んで行った。
歳月《としつき》が重
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