書いた。女の装束に細長衣《ほそなが》を添えた纏頭《てんとう》をお使いへ出した。女王の書いたお返事の字のりっぱであるのを院は御覧になって、こんなにも物事の整った夫人もある六条院へ、一人の夫人となって幼稚な姫宮が行っておられることを心苦しく思召した。
 御出家の際に悲しがった女御《にょご》、更衣《こうい》は院が御寺《みてら》へお移りになることによって、いよいよ散り散りにそれぞれの自邸へ帰るのであったが気の毒な人ばかりであった。尚侍《ないしのかみ》はお崩《かく》れになった皇太后がお住みになった二条の宮へはいって住むことになった。姫宮を心がかりに思召されたのに次いでは尚侍のことを院の帝は顧みがちにされた。
 尼になりたい希望を前尚侍は持っていたが、この際それを実行するのは、人を慕って出家をすることで、悟った人のすることでないと院は御忠告をあそばして、ひたすら御自身の御寺の仏像の製作を急がせておいでになった。
 六条院はこの朧月夜《おぼろづきよ》の前尚侍と飽かぬ別れをあそばされたまま、今もその時に続いて長い恋をしておいでになり、どんな機会にまた逢《あ》うことができよう、今一度は逢って、その時の血
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