院は明けても暮れても女三の宮の将来についてばかり御心配をあそばされるせいもあって、年末が近づいてから御容態がいちじるしくお悪くなり、御簾《みす》の外へおいでになることもなくなった。これまでも妖気《もののけ》がもとでおりおりお煩《わずら》いになることはあっても、こんなに続いて永《なが》く御容態のすぐれぬようなことはなかったのであるから、御自身では御命数の尽きる世が来たというように解釈をあそばすのであった。御退位になってからも御在位時代に恩顧を受けた人たちは、今も優しく寛容な御性質をお慕い申し上げて、屈託なことのある時の慰安を賜わる所のようにして参候する慣《なら》いになっていて、その人たちは院の御悩《ごのう》の重いのを皆心から惜しみ悲しんでいた。六条院からもお見舞いの使いが常に来た。そのうち御自身でもおいでになりたいという御通知のあった時、院は非常にお喜びになった。六条院の御子の源中納言が参院した時に、御病室の御簾《みす》の中へお招きになり、朱雀《すざく》院はいろいろなお話をあそばされた。
「お崩《かく》れになった陛下が御|終焉《しゅうえん》の前に私へいろいろな御遺言をなされたのだが、その
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