とは、今の場合だけでなくこの世を離れる際にも絆《ほだし》になるであろうと思われる。今まで一般の世の中に見ていても、女というものは、その人の意志でもなしに、ほかから働きかける者のために悪名も立てられ、恥辱も受けるような運命になっていくのがかわいそうだ。どの姉妹《きょうだい》にもあなたの御代《みよ》が来た時にはあたたかい庇護を加えてやってもらいたい。その中でも後見をする母などのついている者は託して行く所があるような気もしてまずいいが、女三の宮は年のゆかないのに母のない内親王なのだから、私だけをたよりにして育ってきたことを思うと、私が寺へはいったあとではどんな心細い身の上になることかと気がかりでならない」
と、涙をお拭《ぬぐ》いになりながら東宮へ後事をお頼みになるのであった。母君の女御にも信じ切ったようにして院は女三の宮のことを仰せになった。とはいっても昔宮中にあった時代には、内親王の御母の女御は格別な御|寵愛《ちょうあい》を得ていて、この方にとっては強力な競争者だったのであるから、その宮にまで憎悪《ぞうお》を持つわけはないが真心からお世話をする気にはなれなかったであろうと想像される。
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