た風邪《かぜ》をお引き添えになったのであるが、女三の宮の婚約が成り立ったことで御安心をあそばされた。
六条院も新しい御婚約についての責任感と、紫夫人との夫婦生活の形式が改められねばならぬことをお思いになる苦痛とがお心でいっしょになって煩悶《はんもん》をしておいでになった。朱雀院がそうした考えを持っておいでになるということは女王《にょおう》の耳にもはいっていたのであるが、そんなことにもなるまい、前斎院にあれほど恋はしておられたがしいて結婚も院はなさらなかったのであるからなどと思って、そうした問題のありなしも問わずにいて、疑っていないのを御覧になると、院は心苦しくて、何と思うであろう、自分のこの人に対する愛は少しも変わらないばかりでなく、そういうことになればいよいよ深くなるであろうが、その見きわめがつくまでに、この人は疑って自分自身を苦しめることであろうとお思いになると、お心が静かでありえない。今日になってはもう二人の間に隔てというものは何一つ残さないことに馴《な》れた御夫妻であったから、この話をすぐに話さずにおいでになるのも院は苦痛にされながらその夜はお寝《やす》みになった。
翌日は
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