すが、私が深く愛してお世話を申し上げますれば、あなた様のお手もとにおられますのとたいした変化もなく平和なお気持ちでお暮らしになることができるであろうと存じますが、ただそれはこの年齢の私でございますから、中途でお別れすることになろうという懸念が大きいのでございます」
 こうお言いになって、六条院は女三《にょさん》の宮《みや》との御結婚をお引き受けになったのであった。
 夜になったので御主人の院付きの高官も六条院に供奉《ぐぶ》して参った高官たちにも御|饗応《きょうおう》の膳《ぜん》が出た。正式なものでなくお料理は精進物の風流な趣のあるもので、席にはお居間が用いられた。朱雀院のは塗り物でない浅香の懸盤《かけばん》の上で、鉢《はち》へ御飯を盛る仏家の式のものであった。こうした昔に変わる光景に列席者は涙をこぼした。身にしむ気分の出た歌も人々によって詠《よ》まれたのであったが省略しておく。夜がふけてから六条院はお帰りになったのである。それぞれ等差のある纏頭《てんとう》を供奉の人々はいただいた。別当大納言はお送りをして六条院へまで来た。
 朱雀院は雪の降っていたこの日に起きておいでになったために、ま
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