ともしがたい恋しく苦しい心の慰めに、大将は猫を招き寄せて、抱き上げるとこの猫にはよい薫香《たきもの》の香が染《し》んでいて、かわいい声で鳴くのにもなんとなく見た人に似た感じがするというのも多情多感というものであろう。
 院がこの若い二人の高官のいるほうを御覧になって、
「高官たちの席があまりに軽々しい。こちらへおいでなさい」
 とお言いになって、対のほうの南の座敷へおはいりになったので人々も皆従って行った。兵部卿の宮はまた室《へや》の中へ院とごいっしょに席を移してお落ち着きになった。高官らもごいっしょである。殿上役人たちは敷き物を得て縁側の座に着いた。饗応《きょうおう》というふうでなく椿餠《つばきもち》、梨《なし》、蜜柑《みかん》などが箱の蓋《ふた》に載せて出されてあったのを、若い人たちは戯れながら食べていた。乾物類の肴《さかな》でお座敷の人々へは酒杯が勧められた。衛門督はじっと思い入ったふうをしていて、ともすれば庭の桜へ目をやった。大将はあの場を共に見た人であったから、衛門督が作っている幻の何であるかがわかる気もするのであった。軽々しくあまりな端近へ出ておられたものであると大将は姫宮
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