たないのであるが、ともかくも藤を愛する宴として酒杯が取りかわされ、音楽の遊びをした。しばらくして大臣は酔った振りになって宰相中将に酒をしいようとした。源中将は酔いつぶされまいとして、それを辞し続けていた。
「あなたは末世に過ぎた学才のある人物でいながら、年のいった者を憐《あわれ》んでくれないのは恨めしい。書物にもあるでしょう、家の礼というものが。甥《おい》は伯父《おじ》を愛して敬うべきものですよ。孔子の教えには最もよく通じていられるはずなのだが、私を悩まし抜かれたとそう恨みが言いたい」
などと言って、それは酒に酔って感傷的になっているのか源中将を少しばかり困らせた。
「伯父様を決して粗略には思っておりません。御恩のあるお祖父《じい》様の代わりと思いますだけでも、私の一身を伯父様の犠牲にしてもいいと信じているのですが、どんなことがお気に入らなかったのでしょう。もともと頭がよくないのでございますから、自身でも気づかずに失礼をしていたのでございましょう」
とうやうやしく源中将は言うのであった。よいころを見て大臣は機嫌《きげん》よくはしゃぎ出して「藤のうら葉の」(春日さす藤のうら葉のうちと
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