しが静かで、堂々として鮮明な美しさは源氏の大臣以上だろう。お父様のほうはただただ艶《えん》で、愛嬌《あいきょう》があって、見ている者のほうも自然に笑顔《えがお》が作られるようで、人生の苦というようなものを忘れ去ることのできる力があった。公務を執ることなどはそうまじめにできなかったものだ。しかもこれが道理だと思われたものだ。この人のほうは学問が十分にできているし、性質がしっかりとしていてりっぱな官吏だと世間から認められているらしいよ」
などと言っていたが、身なりを正しく直して宰相中将に面会した。まじめな話は挨拶《あいさつ》に続いて少ししただけであとは藤の宴に移った。
「春の花というものは、どの花だって咲いた最初に目ざましい気のしないものはないが、長くは人を楽しませずにどんどんと散ってしまうのが恨めしい気のするころに、藤の花だけが一歩遅れて、夏にまたがって咲くという点でいいものだと心が惹《ひ》かれて、私はこの花を愛するのですよ。色だって人の深い愛情を象徴しているようでいいものだから」
と言って微笑している大臣の顔も品がよくてきれいであった。月が出ても藤の色を明らかに見せるほどの明りは持
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