とされるのでしょう」
と宰相中将は父に言うのであった。
「特使がつかわされたのだから早く行くがよい」
と源氏は許した。中将はああは言っていても、心のうちは期待されることと、一種の不安とが一つになって苦しかった。
「その直衣《のうし》の色はあまり濃くて安っぽいよ。非参議級とかまだそれにならない若い人などに二藍《ふたあい》というものは似合うものだよ。きれいにして行くがよい」
と源氏は自身用に作らせてあったよい直衣に、その下へ着る小袖《こそで》類もつけて中将の供をして来ていた侍童に持たせてやった。中将は自身の居間のほうで念の入った化粧をしてから黄昏《たそがれ》時も過ぎて、待つほうで気のもまれる時刻に内大臣家へ行った。公達《きんだち》が中将をはじめとして七、八人出て来て宰相中将を座に招じた。皆きれいな公子たちであるが、その中にも源中将は最もすぐれた美貌《びぼう》を持っていた。気高《けだか》い貴人らしいところがことに目にたった。内大臣は若い甥《おい》のために座敷の中の差図《さしず》などをこまごまとしていた。大臣は夫人や若い女房などに、
「のぞいてごらん。ますますきれいになった人だよ。とりな
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