た色を見せているのを、南の町との間の廊の壁をくずさせ、中門をあけて、お目をさえぎる物を省いて御覧にお供えになったのであった。二つの御座《おまし》が上に設けられてあって、主人の院の御座が下がって作られてあったのを、宣旨《せんじ》があってお直させになった。これこそ限りもない光栄であるとお見えになるのであるが、帝《みかど》の御心《みこころ》にはなお一段六条院を尊んでお扱いになれないことを残念に思召《おぼしめ》した。
池の魚を載せた台を左近少将が持ち、蔵人所《くろうどどころ》の鷹飼《たかが》いが北野で狩猟してきた一つがいの鳥を右近少将がささげて、寝殿の東のほうから南の庭へ出て、階段《きざはし》の左右に膝《ひざ》をついて献上の趣を奏上した。太政大臣が命じてそれを大御肴《おおみさかな》に調べさせた。親王がた、高官たちの饗膳《きょうぜん》にも、常の様式を変えた珍しい料理が供えられたのである。人々は陶然と酔って夕べに近いころ、伶人《れいじん》が召し出された。大楽というほどの大がかりなものでなく、感じのよいほどの奏楽の前で御所の侍童たちが舞った。朱雀《すざく》院の紅葉《もみじ》の賀の日がだれにも思い出
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