うの》中将であった。内侍使いは藤典侍《とうないしのすけ》である。勅使の出発する内大臣家へ人々はまず集まったのであった。宮中からも東宮からも今日の勅使には特別な下され物があった。六条院からも贈り物があって、勅使の頭中将の背景の大きさが思われた。宰相中将はいでたちのせわしい場所へ使いを出して典侍へ手紙を送った。思い合った恋人どうしであったから、正当な夫人のできたことで典侍は悲観しているのである。

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何とかや今日のかざしよかつ見つつおぼめくまでもなりにけるかな

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想像もしなかったことです。
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 というのであった。自分のためには晴れの日であることに男が関心を持っていたことだけがうれしかったか、あわただしい中で、もう車に乗らねばならぬ時であったが、

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かざしてもかつたどらるる草の名は桂《かつら》を折りし人や知るらん

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博士《はかせ》でなければわからないでしょう。
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 と返事を書いた。ちょっとした手紙ではあったが、気のきいたものであると宰相中将は思った。こ
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