方から依頼された手紙を、恥じるようにしながら玉鬘《たまかずら》の居間へ持って来たのを、自分で読むことはせずに、女房があけて読むのをだけ姫君は聞いていた。右大将のは、
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恋する人の頼みにします八月もどうやら過ぎてしまいそうな空をながめて私は煩悶《はんもん》しております。
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数ならばいとひもせまし長月に命をかくるほどぞはかなき
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十月に玉鬘が御所へ出ることを知っている書き方である。兵部卿《ひょうぶきょう》の宮は、
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不幸な運命を持つ、無力な私は今さら何を申し上げることもないのですが、
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朝日さす光を見ても玉笹《たまざさ》の葉分《はわけ》の霜は消《け》たずもあらなん
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私の恋する心を認めていてくださいましたら、せめてそれだけを慰めにしたいと思っています。
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というのである。手紙の付けられてあったのは縮かんだようになった下折れ笹に霜の積もったのであって、来た使いの形もこの笹にふさわしい姿であった。式部卿《しきぶきょう》の宮の左
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