源氏物語
篝火
紫式部
與謝野晶子訳

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【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)玉鬘《たまかずら》は

|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)十三|絃《げん》の

[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)[#地から3字上げ]
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[#地から3字上げ]大きなるまゆみのもとに美しくかがり
[#地から3字上げ]火もえて涼風ぞ吹く    (晶子)

 このごろ、世間では内大臣の新令嬢という言葉を何かのことにつけては言うのを源氏の大臣は聞いて、
「ともかくも深窓に置かれる娘を、最初は大騒ぎもして迎えておきながら、今では世間へ笑いの材料に呈供しているような大臣の気持ちが理解できない。自尊心の強い性質から、ほかで育った娘の出来のよしあしも考えずに呼び寄せたあとで、気に入らない不愉快さを、そうした侮辱的扱いで紛らしているのであろう。実質はともかくも周囲の人が愛でつくろえば世間体をよくすることもできるものなのだけれど」
 と言って愛されない令嬢に同情していた。そんなことも聞いて玉鬘《たまかずら》は親であってもどんな性格であるとも知らずに接近して行
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