っては恥ずかしい目にあうことが自分にないとも思われないと感じた。右近もそれを強めたような意見を告げた。迷惑な恋心は持たれているが、そうかといって無理をしいようともせず愛情はますます深く感ぜられる源氏であったから、ようやく玉鬘も不安なしに親しむことができるようになった。
 秋にもなった。風が涼しく吹いて身にしむ思いのそそられる時であるから、恋しい玉鬘の所へ源氏は始終来て、一日をそこで暮らすようなことがあった。琴を教えたりもしていた。五、六日ごろの夕月は早く落ちてしまって、涼しい色の曇った空のもとでは荻《おぎ》の葉が哀れに鳴っていた。琴を枕《まくら》にして源氏と玉鬘とは並んで仮寝《かりね》をしていた。こんなみじめな境地はないであろうと源氏は歎息《たんそく》をしながら夜ふかしをしていたが、人が怪しむことをはばかって帰って行こうとして、前の庭の篝《かがり》が少し消えかかっているのを、ついて来ていた右近衛《うこんえ》の丞《じょう》に命じてさらに燃やさせた。涼しい流れの所におもしろい形で広がった檀《まゆみ》の木の下に美しい篝は燃え始めたのである。座敷のほうへはちょうど涼しいほどの明りがさして、女の
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