とだけほのかに書かれたらしい。字にもう少し重厚な気が添えたいと芸術家的な好みを持っておいでになる宮はお思いになったようであった。
 今日は美しく作った薬玉《くすだま》などが諸方面から贈られて来る。不幸だったころと今とがこんなことにも比較されて考えられる玉鬘《たまかずら》は、この上できるならば世間の悪名を負わずに済ませたいともっともなことを願っていた。
 源氏は花散里《はなちるさと》夫人の所へも寄った。
「中将が左近衛府《さこんえふ》の勝負のあとで役所の者を皆つれて来ると言ってましたからその用意をしておくのですね。まだ明るいうちに来るでしょう。私は何も麗々しく扱おうと思っていなかった姫君のことを、若い親王がたなどもお聞きになって手紙などをよくよこしておいでになるのだから、今日はいい機会のように思って、東の御殿へ何人も出ておいでになることになるでしょうから、そんなつもりで仕度《したく》をさせておいてください」
 などと夫人に言っていた。馬場殿はこちらの廊からながめるのに遠くはなかった。
「若い人たちは渡殿《わたどの》の戸をあけて見物するがよい。このごろの左近衛府にはりっぱな下士官がい
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