とお言いになってから、源氏に、
「あなたはお兄様なのですからお助けください」
と源氏にその杯をお譲りになるのであった。源氏は満面に笑《え》みを見せながら言う。
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淵に身を投げつべしやとこの春は花のあたりを立ちさらで見ん
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源氏がぜひと引きとめるので、宮もお帰りになることができなかった。
今朝《けさ》の管絃楽はまたいっそうおもしろかった。この日は中宮が僧に行なわせられる読経《どきょう》の初めの日であったから、夜を明かした人たちは、ある部屋部屋《へやべや》で休息を取ってから、正装に着かえてそちらへ出るのも多かった。障《さわ》りのある人はここから家へ帰った。正午ごろに皆中宮の御殿へ参った。殿上役人などは残らずそのほうへ行った。源氏の盛んな権勢に助けられて、中宮は百官の全《まった》い尊敬を得ておいでになる形である。春の女王《にょおう》の好意で、仏前へ花が供せられるのであったが、それはことに美しい子が選ばれた童女八人に、蝶《ちょう》と鳥を形どった服装をさせ、鳥は銀の花瓶《かびん》に桜のさしたのを持たせ、蝶には金の花瓶に山吹をさしたのを持たせ
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