いた。女に対して驕慢《きょうまん》な心にもついなりそうな境遇にいる源氏ではあるが、末々の恋人にまで誠意を忘れず持ってくれることに、それらの人々は慰められて年月を送っていた。
今年《ことし》の正月には男踏歌《おとことうか》があった。御所からすぐに朱雀《すざく》院へ行ってその次に六条院へ舞い手はまわって来た。道のりが遠くてそれは夜の明け方になった。月が明るくさして薄雪の積んだ六条院の美しい庭で行なわれる踏歌がおもしろかった。舞や音楽の上手《じょうず》な若い役人の多いころで、笛なども巧みに吹かれた。ことにここでのできばえを皆晴れがましく思っているのである。他の二夫人らにも来て見物することを源氏が勧めてあったので、南の御殿の左右の対や渡殿《わたどの》を席に借りて皆来ていた。東の住居《すまい》の西の対の玉鬘《たまかずら》の姫君は南の寝殿に来て、こちらの姫君に面会した。紫夫人も同じ所にいて几帳《きちょう》だけを隔てて玉鬘と話した。踏歌の組は朱雀《すざく》院で皇太后の宮のほうへ行っても一回舞って来たのであったから、時間がおそくなり、夜も明けてゆくので、饗応《きょうおう》などは簡単に済ますのでないか
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