と思っていたが、普通以上の歓待を六条院では受けることになった。光の強い一月の暁の月夜に雪は次第に降り積んでいった。松風が高い所から吹きおろしてきてすさまじい感じにももう一歩でなりそうな庭にもう折り目もなくなった青色の上着に白襲《しろがさね》を下にしただけの服装に、見ばえのない綿を頭にかぶっている舞い手が出ているだけのことも、所がらかおもしろくて、命も延びるほどに観衆は思った。源氏の子息の中将と内大臣の公子たちが舞い手の中ではことにはなやかに見えた。ほのぼのと東の空が白んでゆく光に、やや大降りに降る雪の影が見えて寒い中で、「竹川」を歌って、右に寄り、左に集まって行く舞い手の姿、若々しいその歌声などは、絵にかいて残すことのできないのが遺憾である。各夫人の見物席には、いずれ劣らぬ美しい色を重ねた女房の袖口《そでぐち》が出ていて、曙《あけぼの》の空に春の花の錦《にしき》を霞《かすみ》が長く一段だけ見せているようで、これがまた見ものであった。舞い人は、「高巾子《こうこじ》」という脱俗的な曲を演じたり、自由な寿詞《じゅし》に滑稽味《こっけいみ》を取り混ぜたりもして、音楽、舞曲としてはたいして価値の
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