てみせよう、まだ成っていない貴公子たちの懸想《けそう》ぶりをたんと拝見しよう」
 と源氏が言うと、
「変な親心ね。求婚者の競争をあおるなどとはひどい方」
 と女王《にょおう》は言う。
「そうだった、あなたを今のような私の心だったらそう取り扱うのだった。無分別に妻などにはしないで、娘にしておくのだった」
 夫人の顔を赤らめたのがいかにも若々しく見えた。源氏は硯《すずり》を手もとへ引き寄せながら、無駄《むだ》書きのように書いていた。

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恋ひわたる身はそれながら玉鬘《たまかづら》いかなる筋を尋ね来つらん
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「かわいそうに」
 とも独言《ひとりごと》しているのを見て、玉鬘の母であった人は、前に源氏の言ったとおりに、深く愛していた人らしいと女王は思った。
 源氏は子息の中将にも、こうこうした娘を呼び寄せたから、気をつけて交際するがよいと言ったので、中将はすぐに玉鬘の御殿へ訪《たず》ねて行った。
「つまらない人間ですが、こんな弟がおりますことを御念頭にお置きくださいまして、御用があればまず私をお呼びになってください。こちらへお移りになりました時も、
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