られるのであった。ようやく椿市《つばいち》という所へ、京を出て四日めの昼前に、生きている気もしないで着いた。姫君は歩行らしい歩行もできずに、しかもいろいろな方法で足を運ばせて来たが、もう足の裏が腫《は》れて動かせない状態になって椿市で休息をしたのである。頼みにされている豊後介と、弓矢を持った郎党が二人、そのほかは僕《しもべ》と子供侍が三、四人、姫君の付き添いの女房は全部で三人、これは髪の上から上着を着た壺装束《つぼしょうぞく》をしていた。それから下女が二人、これが一行で、派手《はで》な長谷詣りの一行ではなかった。寺へ燈明料を納めたりすることをここで頼んだりしているうちに日暮れ時になった。この家の主人《あるじ》である僧が向こうで言っている。
「私には今夜泊めようと思っているお客があったのだのに、だれを勝手に泊めてしまったのだ、物知らずの女どもめ、相談なしに何をしたのだ」
 怒《おこ》っているのである。九州の一行は残念な気持ちでこれを聞いていたが、僧の言ったとおりに参詣者の一団が町へはいって来た。これも徒歩で来たものらしい。主人らしいのは二人の女で召使の男女の数は多かった。馬も四、五匹引か
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