せている。目だたぬようにしているが、きれいな顔をした侍などもついていた。主人の僧は先客があってもその上にどうかしてこの連中を泊めようとして、道に出て頭を掻《か》きながら、ひょこひょこと追従《ついしょう》をしていた。かわいそうな気はしたが、また宿を変えるのも見苦しいことであるし、面倒《めんどう》でもあったから、ある人々は奥のほうへはいり、残りの人々はまた見えない部屋《へや》のほうへやったりなどして、姫君と女房たちとだけはもとの部屋の片すみのほうへ寄って、幕のようなもので座敷の仕切りをして済ませていた。あとの客も無作法な人たちではなかった。遠慮深く静かで、双方ともつつましい相い客になっていた。このあとから来た女というのは、姫君を片時も忘れずに恋しがっている右近であった。年月がたつにしたがって、いつまでも続けている女房勤めも気がさすように思われて、煩悶《はんもん》のある心の慰めに、この寺へたびたび詣《まい》っているのである。長い間の経験で徒歩の旅を大儀とも何とも思っているのではなかったが、さすがに足はくたびれて横になっていた。こちらの豊後介は幕の所へ来て、食事なのであろう、自身で折敷《おしき
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