まないこととお思われになったし、源氏が父君でありながら自分の臣下となっているということももったいなく思召された。お胸が苦しくて朝の時が進んでも御寝室をお離れにならないのを、こうこうと報《しら》せがあって源氏の大臣が驚いて参内した。お出ましになって源氏の顔を御覧になるといっそう忍びがたくおなりあそばされた。帝は御落涙になった。源氏は女院をお慕いあそばされる御親子の情から、夜も昼もお悲しいのであろうと拝見した、その日に式部卿《しきぶきょう》親王の薨去が奏上された。いよいよ天の示しが急になったというように帝はお感じになったのであった。こんなころであったからこの日は源氏も自邸へ退出せずにずっとおそばに侍していた。しんみりとしたお話の中で、
「もう世の終わりが来たのではないだろうか。私は心細くてならないし、天下の人心もこんなふうに不安になっている時だから私はこの地位に落ち着いていられない。女院がどう思召すかと御遠慮をしていて、位を退くことなどは言い出せなかったのであるが、私はもう位を譲って責任の軽い身の上になりたく思う」
こんなことを帝は仰せられた。
「それはあるまじいことでございます。死人が
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