やすかったことと比較して主人《あるじ》の女御にいくぶんの軽蔑《けいべつ》の念が起こらないでもなかった。
この日は後宴《ごえん》であった。終日そのことに携わっていて源氏はからだの閑暇《ひま》がなかった。十三|絃《げん》の箏《そう》の琴の役をこの日は勤めたのである。昨日の宴よりも長閑《のどか》な気分に満ちていた。中宮は夜明けの時刻に南殿へおいでになったのである。弘徽殿の有明《ありあけ》の月に別れた人はもう御所を出て行ったであろうかなどと、源氏の心はそのほうへ飛んで行っていた。気のきいた良清《よしきよ》や惟光《これみつ》に命じて見張らせておいたが、源氏が宿直所《とのいどころ》のほうへ帰ると、
「ただ今北の御門のほうに早くから来ていました車が皆人を乗せて出てまいるところでございますが、女御さん方の実家の人たちがそれぞれ行きます中に、四位少将、右中弁などが御前から下がって来てついて行きますのが弘徽殿の実家の方々だと見受けました。ただ女房たちだけの乗ったのでないことはよく知れていまして、そんな車が三台ございました」
と報告をした。源氏は胸のとどろくのを覚えた。どんな方法によって何女《なにじょ》
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