であるかを知ればよいか、父の右大臣にその関係を知られて婿としてたいそうに待遇されるようなことになって、それでいいことかどうか。その人の性格も何もまだよく知らないのであるから、結婚をしてしまうのは危険である、そうかといってこのまま関係が進展しないことにも堪えられない、どうすればいいのかとつくづく物思いをしながら源氏は寝ていた。姫君がどんなに寂しいことだろう、幾日も帰らないのであるからとかわいく二条の院の人を思いやってもいた。取り替えてきた扇は、桜色の薄様を三重に張ったもので、地の濃い所に霞《かす》んだ月が描《か》いてあって、下の流れにもその影が映してある。珍しくはないが貴女《きじょ》の手に使い馴《な》らされた跡がなんとなく残っていた。「草の原をば」と言った時の美しい様子が目から去らない源氏は、

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世に知らぬここちこそすれ有明の月の行方《ゆくへ》を空にまがへて
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 と扇に書いておいた。
 翌朝源氏は、左大臣家へ久しく行かないことも思われながら、二条の院の少女が気がかりで、寄ってなだめておいてから行こうとして自邸のほうへ帰った。二、三日ぶりに
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