りするおりがあるのを源氏はかわいく思っていた。二、三日御所にいて、そのまま左大臣家へ行っていたりする時は若紫がまったくめいり込んでしまっているので、母親のない子を持っている気がして、恋人を見に行っても落ち着かぬ心になっているのである。僧都《そうず》はこうした報告を受けて、不思議に思いながらもうれしかった。尼君の法事の北山の寺であった時も源氏は厚く布施《ふせ》を贈った。
 藤壺《ふじつぼ》の宮の自邸である三条の宮へ、様子を知りたさに源氏が行くと王命婦《おうみょうぶ》、中納言の君、中務《なかつかさ》などという女房が出て応接した。源氏はよそよそしい扱いをされることに不平であったが自分をおさえながらただの話をしている時に兵部卿《ひょうぶきょう》の宮がおいでになった。源氏が来ていると聞いてこちらの座敷へおいでになった。貴人らしい、そして艶《えん》な風流男とお見えになる宮を、このまま女にした顔を源氏はかりに考えてみてもそれは美人らしく思えた。藤壺の宮の兄君で、また可憐《かれん》な若紫の父君であることにことさら親しみを覚えて源氏はいろいろな話をしていた。兵部卿の宮もこれまでよりも打ち解けて見える美し
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