しうるだろうと源氏は思って、その人が少しのことで源氏から離れるような軽率な行為に出ない性格であることも源氏は信じて疑わなかったのである。永久に結ばれた夫婦としてその人を思う愛にはまた特別なものがあった。
若紫は馴《な》れていくにしたがって、性質のよさも容貌《ようぼう》の美も源氏の心を多く惹《ひ》いた。姫君は無邪気によく源氏を愛していた。家の者にも何人《なにびと》であるか知らすまいとして、今も初めの西の対《たい》を住居《すまい》にさせて、そこに華麗な設備をば加え、自身も始終こちらに来ていて若い女王《にょおう》を教育していくことに力を入れているのである。手本を書いて習わせなどもして、今までよそにいた娘を呼び寄せた善良な父のようになっていた。事務の扱い所を作り、家司《けいし》も別に命じて貴族生活をするのに何の不足も感じさせなかった。しかも惟光《これみつ》以外の者は西の対の主の何人《なにびと》であるかをいぶかしく思っていた。女王は今も時々は尼君を恋しがって泣くのである。源氏のいる間は紛れていたが、夜などまれにここで泊まることはあっても、通う家が多くて日が暮れると出かけるのを、悲しがって泣いた
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