い髪よりも艶《えん》なものであるという感じを与えた。きれいな中年の女房が二人いて、そのほかにこの座敷を出たりはいったりして遊んでいる女の子供が幾人かあった。その中に十歳《とお》ぐらいに見えて、白の上に淡黄《うすき》の柔らかい着物を重ねて向こうから走って来た子は、さっきから何人も見た子供とはいっしょに言うことのできない麗質を備えていた。将来はどんな美しい人になるだろうと思われるところがあって、肩の垂《た》れ髪の裾が扇をひろげたようにたくさんでゆらゆらとしていた。顔は泣いたあとのようで、手でこすって赤くなっている。尼さんの横へ来て立つと、
「どうしたの、童女たちのことで憤《おこ》っているの」
 こう言って見上げた顔と少し似たところがあるので、この人の子なのであろうと源氏は思った。
「雀《すずめ》の子を犬君《いぬき》が逃がしてしまいましたの、伏籠《ふせご》の中に置いて逃げないようにしてあったのに」
 たいへん残念そうである。そばにいた中年の女が、
「またいつもの粗相《そそう》やさんがそんなことをしてお嬢様にしかられるのですね、困った人ですね。雀はどちらのほうへ参りました。だいぶ馴《な》れてき
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