分であった秘密を人に知らせたくないと思うふうであったから、そんなことで小さいお嬢さんの消息も聞けないままになって不本意な月日が両方の間にたっていった。
 源氏はせめて夢にでも夕顔を見たいと、長く願っていたが比叡《ひえい》で法事をした次の晩、ほのかではあったが、やはりその人のいた場所は某《それがし》の院で、源氏が枕《まくら》もとにすわった姿を見た女もそこに添った夢を見た。このことで、荒廃した家などに住む妖怪《あやかし》が、美しい源氏に恋をしたがために、愛人を取り殺したのであると不思議が解決されたのである。源氏は自身もずいぶん危険だったことを知って恐ろしかった。
 伊予介《いよのすけ》が十月の初めに四国へ立つことになった。細君をつれて行くことになっていたから、普通の場合よりも多くの餞別《せんべつ》品が源氏から贈られた。またそのほかにも秘密な贈り物があった。ついでに空蝉《うつせみ》の脱殻《ぬけがら》と言った夏の薄衣《うすもの》も返してやった。

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逢《あ》ふまでの形見ばかりと見しほどにひたすら袖《そで》の朽ちにけるかな
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 細々《こまごま》しい
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