れきり床について煩ったのである。重い容体が二、三日続いたあとはまた甚《はなはだ》しい衰弱が見えた。源氏の病気を聞こし召した帝《みかど》も非常に御心痛あそばされてあちらでもこちらでも間断なく祈祷《きとう》が行なわれた。特別な神の祭り、祓《はら》い、修法《しゅほう》などである。何にもすぐれた源氏のような人はあるいは短命で終わるのではないかといって、一天下の人がこの病気に関心を持つようにさえなった。
 病床にいながら源氏は右近を二条の院へ伴わせて、部屋《へや》なども近い所へ与えて、手もとで使う女房の一人にした。惟光《これみつ》は源氏の病の重いことに顛倒《てんとう》するほどの心配をしながら、じっとその気持ちをおさえて、馴染《なじみ》のない女房たちの中へはいった右近のたよりなさそうなのに同情してよく世話をしてやった。源氏の病の少し楽に感ぜられる時などには、右近を呼び出して居間の用などをさせていたから、右近はそのうち二条の院の生活に馴《な》れてきた。濃い色の喪服を着た右近は、容貌《ようぼう》などはよくもないが、見苦しくも思われぬ若い女房の一人と見られた。
「運命があの人に授けた短い夫婦の縁から、そ
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