係を作る男の愚かさを左馬頭《さまのかみ》の言ったのは真理であると思うと、源氏は自分に対して空蝉の冷淡なのは恨めしいが、この良人《おっと》のためには尊敬すべき態度であると思うようになった。
 伊予介が娘を結婚させて、今度は細君を同伴して行くという噂《うわさ》は、二つとも源氏が無関心で聞いていられないことだった。恋人が遠国へつれられて行くと聞いては、再会を気長に待っていられなくなって、もう一度だけ逢《あ》うことはできぬかと、小君《こぎみ》を味方にして空蝉に接近する策を講じたが、そんな機会を作るということは相手の女も同じ目的を持っている場合だっても困難なのであるのに、空蝉のほうでは源氏と恋をすることの不似合いを、思い過ぎるほどに思っていたのであるから、この上罪を重ねようとはしないのであって、とうてい源氏の思うようにはならないのである。空蝉はそれでも自分が全然源氏から忘れられるのも非常に悲しいことだと思って、おりおりの手紙の返事などに優しい心を見せていた。なんでもなく書く簡単な文字の中に可憐《かれん》な心が混じっていたり、芸術的な文章を書いたりして源氏の心を惹《ひ》くものがあったから、冷淡な恨
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