って終《しま》った。右衛門も腕の力を暖簾《のれん》にごまかされたようになっては、流石《さすが》にあれだけの器量のある女だから、やっきとなって色々にかき口説いたろうが、人間には生れついて性格技能のほかに、丈の高さというものがあるのだから、定基の馬鹿に丈の高いのには、右衛門の手が届きかねたのであろう、何の手応えも生じかねたのである。世の中には何も出来ないで丈ばかり高いものがあるが、それは戦乱の世なら萱《かや》や薄《すすき》のように芟《か》り倒されるばかり、平和の世なら自分から志願して狂人《きちがい》になる位が結局《おち》で、社会の難物たるに止《とどま》るものだが、定基は蓋《けだ》し丈の高い人だったろう。そこで右衛門は自尊心や自重心を傷つけられたに過ぎぬ結果になって、甚だ面白く無く、手持無沙汰になって、定基の妻や母にも面目無く、いささか器量を下げて、腹の中は甚だ面白からず、何様《どう》ぞ宜く御考えなされまして、という位を定基に言って引退《ひきさが》るよりほか無くなった。此処で何様いう風に右衛門が巧みに訴え、上手に弁じ、手強《てづよ》く筋を通して物語ったかは、一寸書き現わしたくもあるところだが
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