世俗に反り、冠などして、無間地獄《むげんじごく》に陥る業を造りたまうぞ、誠に悲しき違乱のことなり、強いて然《さ》ることせんとならば、ただここにある寂心を殺したまえ、と云いて泣くことおびただしいので、陰陽師は何としようも無く当惑したが、飽《あく》まで俗物だから、俗にくだけて打明け話に出た。仰せは一々御もっともでござる、しかし浮世の過しがたさに、是《かく》の如くに仕る、然らずば何わざをしてかは妻子をばやしない、吾《わ》が生命《いのち》をも続《つな》ぐことのなりましょうや、道業《どうごう》猶《なお》つたなければ上人とも仰がれず、法師の形には候えど俗人の如くなれば、後世《ごせ》のことはいかがと哀しくはあれど、差当りての世のならいに、かくは仕る、と語った。何時の世にも斯様《こう》いう俗物は多いもので、そして又|然様《そう》いう俗物の言うところは、俗世界には如何にも正しい情理であると首肯されるものである。しかし折角殊勝の世界に眼を着け、一旦それに対《むか》って突進しようと心ざした者共が、此の一関《いっかん》に塞止《せきと》められて已《や》むを得ずに、躊躇《ちゅうちょ》し、俳徊《はいかい》し、遂に後
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