いるのである。かくて香に参した此人の終りは、宋人|魏泰《ぎたい》の東軒筆録に記されている。曰《いわ》く、丁晋公臨終前半月、已《すで》に食《くら》はず、但《ただ》香を焚《た》いて危坐《きざ》し、黙して仏経を誦《じゆ》す、沈香の煎湯《せんたう》を以て時々《じゞ》少許《せうきよ》を呷《あふ》る、神識乱れず、衣冠を正し、奄然《えんぜん》として化し去ると。



底本:「昭和文学全集 第4巻」小学館
   1989(平成元)年4月1日初版第1刷
底本の親本:「露伴全集」岩波書店
   1978(昭和53)年
※底本では、右寄せ小書きになっている「ノ」と、やや大きく中央に来ている「ノ」が混在していますが、底本の扱いをなぞり、前者のみを訓点送り仮名として処理しました。
入力:kompass
校正:今井忠夫
2003年5月28日作成
2006年5月19日修正
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